作文練習

真理を記載しています。

大人に嫌われていた

大人に嫌われる子供だったと思う。今でもさして変わらないのだが。

特に親戚からは、嫌われてはいなかったにしても、可愛がられてもいなかった。

親戚の数がそんなには多くない家系で、定期的に会うのは両祖父母と叔父伯母が数人とその家族くらいなもので、私と歳が近いのは従兄一人と姉だけだった。常に一番幼かったからであろうか、親戚の集まりで大人たちが酒を飲んでいる中で私だけが露骨に退屈そうにしていて、不興を買っていたのを覚えている。私だけがいつも我儘で、大人に合わせることが出来ず、扱いにくく思われていた*1

対照的に、姉は大人たちから気に入られていた。姉はいつもおとなしかったし、大人から話を振られてもそれなりに返していたし、不満や退屈を顔に出すタイプではなかった。加えて不出来な弟に適度に構ってあげて、彼が大人たちの迷惑にならないようにしていた。姉は良い子でいるのが巧かった。

当時の私にはそういうことは全く見えていなかった。大人にどう思われるかなど気にしていなかったし、姉に苦労をかけていたことなど思いもよらなかった。幼かったというのもあるだろうが、年下のいない状況に甘えていたとも思う。

 

ある日を境に、姉は良い子でいることをやめてしまった。少なくとも親戚の集まりに顔を出すような状態ではなくなった。そして入れ替わるように私は良い子を演じ始めた。既に私は高校生である程度退屈な時間の過ごし方も大人との話し方も理解していたのもあるが、姉弟共に親戚関係に馴染めていなかったら父母の親戚内での立場が悪くなるだろうなという打算も少し働いていた*2。私は高校生になってようやく親戚社会に参画したが、姉はそれを恐らく小学生頃から行っていたのだと思うと頭の下がるばかりだ。

後になって親から聞いた姉の子供の頃のエピソードから察するに、彼女は本質的には良い子ではなかったように思える。ある種大人を騙してやり過ごそうとする彼女生来の気質と、私という人間の存在のせいで、彼女はそれなりに無理をして良い子を演じていたのだと思う。

大人になった私がいくら親戚社会に参画しようとも子供の頃にそれを行っていた彼女への埋め合わせにはならないし、今更私から彼女に出来ることは殆ど無いのだが、せめて私という軛から解放されて自由に生きてくれれば良いと思っている。

*1:未だに本質的に変わっていないので子供の頃のどういうところが悪かったのか具体的に出てこない。

*2:加えてこの頃から祖父母や父母が将来的に死ぬことを考えて、その時に子や孫との思い出が少ないというのは寂しいものがあるという想像を働かせて、ある程度親戚関係へ積極的になり始めていた。