思考の声
私の思考は声として聞こえる。
たとえば本を読む時、私は眼で捉えた文章を頭の中で「音読」している。自分自身に読み聞かせてあげることで文章を頭に入れている。それ以外の方法を知らない。
同様にして一人で何かを考える時も、考えを声にして頭の中で響かせる。それ以外の方法で、たとえば文字を思い浮かべて思考することというのは出来そうにもない。
1つ気になるのはこれが一体誰の声なのか、ということだ。あまり音に関して繊細な人間でないので断言は出来ないが、この脳内の声は自分自身の肉声とは違ったものに思える。かといって他の誰という訳でもないし、脳内の声を出力して照合させることも出来ない。
或いは今時合成音声を使って様々な声を生成していけばいずれはこの声に近いものを生み出せるのかもしれないが、どうにもそういう代物とも思えない。耳で聞いた途端に逃げていく気がする。
そもそも一定の声色なのかすら定かでない。何なら小説を読んでいる時などは人物によって僅かに声色を変えているような気がする。それらの声も誰を参照しているのか分からない。
そしてこれに一般性はあるのだろうか。
私以外の人々は自身の思考の声を聞いているのだろうか。