作文練習

真理を記載しています。

思考の形状

リンゴを思い浮かべてみてほしい。

 

私がリンゴを思い浮かべるとき、なんとなくその色や形が定まっている。やろうと思えば嚙んだ時の歯応えや、味なんかも想像することが出来る。

例えば黒くて角ばった自分の身長よりも大きい物体を持ってこられて、「あなたの想像したリンゴはこれですか」と尋ねられたら、相当強い自信をもって「違います」と答えられるだろう。

或いはフニャフニャで噛んだらとめどなく苦い液体が溢れ出てくるような物体を持ってこられて同じことを尋ねられても、やはり「違います」と答えられるだろう。

 

これをどんどんリンゴ様の物体に近づけていったらどうなるだろう。

例えば赤くて真球に近いような物体を持ってこられたら、「形が違う」と判断できるだろう。青リンゴを持ってこられたら「色が違う」と判断できるだろう。

そして遂には私が「リンゴ」としか言えないような正しくリンゴが持ってこられる。しかしそれは私が最初に想定していたリンゴと必ずしも完全に一致していない。色や形が僅かに異なっている。きっと歯ごたえも異なるのだろう。

しかし私はどのようなリンゴを持ってこられようとも想像と完全に一致していると判断することは出来ないのではないだろうか。というのもそもそも当初想定していたリンゴというものがとても曖昧で、裏側がどうなっているかまで想像が及んでいなかったり、内部の種の位置がどうなっているかなんて気にしてもいない。

 

では一体私は何を想像していたのだろうか。

現実のどのリンゴと一致するわけでもなければ、今まで私がリンゴとして認識してきたものの平均値や中央値的なものでもない(そうであれば種は消失していない)。

 

敢えて最初から抽象的な事物を思い浮かべてみよう。

例えば三角形。

適当に思い浮かべると二等辺三角形っぽくなる。黒の三本の線分で構成されていて、面の部分は白い。しかし本当に真っ白だろうか、と言われると自信を持てない。#FFFFFFだろうか*1

線の太さ、辺の長さ、厚み、なんてどのような値を設定したとしてもしっくりこない気がする*2

 

以前の記事における想像不可能性みたいなところはこういう例との類推で理解できる*3

 

machitomu.hatenablog.com

 

*1:こう言うと色覚が鋭敏な人なら少なくとも色に関しては一意に定められると言いたくなる。私自身がどのような側面に対してもそのような鋭敏な感覚を持っていないので自信はないが、しかしそれは違うのではないかという気がする。

*2:勿論数学的な三角形の定義にこのようなアスペクトは不要だが、ここではどのようなものが現前したら納得できるかを考えている

*3:このような考えを突き詰めていくと、「私の思考はどのような現実事象にも対応していない」「私の言語表現は現実世界に届かず、空想世界で閉じてしまっている」と言いたくなる。そして同時に「そんな訳がない」とも言いたくなる。この図式は所謂「ツルツルした氷」と「ザラザラした大地」の比喩から捉えることも出来るかもしれない。