作文練習

真理を記載しています。

家系

最近、祖父が亡くなった。

コロナ禍ということもあり*1、非常に小規模な葬儀となった。というか最早葬儀らしい葬儀の部分はなく、火葬場の前で遺体を見送った後、骨を骨壺に入れたくらいのことしかしていない。

葬儀に参列した人間も親族に限られており、祖父は四人兄弟の末弟で、兄弟本人もその子供たちも殆ど亡くなっていたため、参列者はごく僅かなものとなっていた。

私の父は祖父の一番上の子供であったため、葬儀に纏わる準備などでかなり慌ただしくしていたが、それは葬儀が終わっても尚解放されず、各種手続きに奔走していた。

こんな機会でもなければ見ることもないのが戸籍というもので、父親も今回初めて祖父の戸籍を確認したらしい。

そこで分かったことに、祖父は四人兄弟の末弟ではなく、五人兄弟の末弟だったのだ。父親も聞いたことも見たこともなければ、祖父の配偶者である祖母も知らない長兄がいたことが発覚してしまった。

実は祖父は生前に家系図を残しており、自身の親族は勿論、配偶者の親族まで可能な限り遡って記載されていた。そしてそこにははっきりと、自身が四男であるように位置付けており、未知の長兄については、恐らく意図的に、記載されておらず、戸籍上次男である人物を長男として記載していた。

戸籍を見るとその未知の長兄は数十年前に四十代の若さでなくなっており、しかしその頃に祖父は既に二十代で、とても長兄の存在を知らなかったとは思えない。

となると、邪推が働いてしまう。未知の長兄は、当時の価値観で、存在を人に知られたくない者だったのではないかと。

私は戸籍に記載されていた未知の長兄の死亡地を調べ(当時と現在で住所の表記が異なるので少し苦労したが)、そこが精神病院であったことを突き止めた。

祖父が亡くなってしまった今となってはその人がどういう人間で、どうして秘匿していたのか、そもそも存在を知っていたのかは知る由もない。

人が死ぬことで人に尋ねたいことが出来るというのは中々皮肉なものだと思った。

*1:これを言い訳にして金と手間を節約したかったのだろうというのが本音だろう